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【どう違う?】古事記と日本書記

こんにちは。本宮貴大です。
この度は記事を閲覧していただき、本当にありがとうございます。
今回のテーマは「【どう違う?】古事記と日本書記」というお話です。

古事記』と『日本書紀』は、日本の歴史をはじめて体系的に編纂した書物で、どちらも天武天皇の命令によって編纂が開始された歴史書です。
しかし、どちらも神代(神話の時代)から飛鳥時代までを扱っており、両書に内容的な差異はありません。
なぜ、同時期に似たような歴史書が2つ成立したのでしょうか。
今回は、そんな両書の違いを見ていきながら、その理由を探ってみましょう。

古事記 日本書記
712年完成 720年完成
全3巻 全30巻
著・稗田阿礼太安万侶 著・舎人親王
紀伝体で記す 編年体で記す
神話を重視 歴史的事実を重視
国内向け 国外向け
日本式の漢文 中国式の漢文
私的蔵書 公的資料

 まず『古事記』の編纂ですが、天武天皇は『帝紀』という皇室系図と、『旧辞』という神話や伝承を稗田阿礼という舎人(天皇や貴族の従者)に暗記させた。その後、阿礼が年老いて口承が途絶えてしまうのを心配した元明天皇は、下級貴族の太安万侶に命じて阿礼の語りを筆録させました。こうして天皇家や豪族の家に伝わる話を聞きながらまとめたものが『古事記』です。712年元明天皇の御代に完成しました。
 一方の『日本書紀』は帝紀旧辞を原本としながらも、中国・朝鮮の正史や日本の古記録を取り入れ、天武天皇の皇子・舎人親王がまとめ、720年元正天皇の時代に完成しました。
このふたつの書は、それぞれ最後の字をとって「記紀」といいます。

 『古事記』では登場人物を中心にその周囲で起こる出来事を時系列で追っていく手法の紀伝体で記しています。いわゆる「伝記」です。
 一方の『日本書紀』では時間軸を中心に年や月ごとに起こる出来事を紹介していく手法の編年体で記されています。例えるなら年表を文字で表していると思ってください。
 紀伝体は登場人物の行動や心情がよくわかるが、時代の流れはとらえにくいです。一方の編年体は時代の流れはわかりやすくても、個々の人物の行動や心情が読みとりにくいです。

 つまり、『古事記』は天皇家の祖先とされる神々の物語(神話)に力を入れ、ストーリー性が強く、読み物としては大変面白く、敗者や悲劇の人物も登場し、反国家的な物語も多く掲載されています。『古事記』は上・中・下巻の全3巻からなり、そのうち上巻、つまり3分の1を神話が占めています。建国神話から神武天皇に至り、そして推古天皇まであつかっています。
 一方の『日本書紀』はあくまで事実を記す歴史書であることを重視しており、反国家的な物語は極力排除されています。『日本書紀』は全30巻からなり、1~2巻を神代、3~22巻を神武天皇から推古天皇まで、23~30巻は舒明天皇から持統天皇まで扱っています。『古事記』に比べ、神話が収められているのは全体の8分の1しかありません。

 記述方法にも違いがあります。『古事記』は日本式の漢文、つまり漢字を訓読みで書かれています。
一方の『日本書紀』は中国式の漢文で、つまり当時の国際語で多くの外国人に見てもらうための公的な文章として書かれています。

 『日本書紀』は中国を模倣して正史として編まれた国外向けの公的資料であり、ゆえに多くの官人や知識人が関わった国家的な大プロジェクトでした。完成してからは役人の必読書となり、平安時代には宮中でしばしば『日本書紀』の抗議が開かれています。以後、この国家プロジェクトは継続され、『続日本紀』(797年)、『日本後紀』(840年)と書紀に続く5つの正史が編集され、全体で『六国史』となっています。
 一方の『古事記』は天皇家に保存される私的蔵書であり、完成までに関わったのは稗田阿礼太安万侶の2人だけで、ゆえに単発で終わっています。

 このように『古事記』と『日本書紀』の両書には内容的な差はなくても、その編纂目的が違うので、編纂に関わった人や神話の割合、記述方法に違いがみられるのです。『古事記』は天皇と神々の血縁関係を強調しており、国内での天皇の権威付けを図る目的があります。一方の『日本書紀』は国外に向けて日本という国の正統性を主張しており、支配王朝としてヤマト政権を揺るぎないものにすることを目的としています。

 今回は『古事記』と『日本書紀』についてご紹介してみましたが、記述文字をもたなかった古代の日本人が口承によって語り継いできた神話や伝承を初めて文字化した正式な書物として両書は大変貴重な書物といえるでしょう。
 そのような神話を無理なく天皇家につなげることで、天皇家は神聖性を帯び、国民に対し、その支配の正統性を主張できるのです。天武天皇は2つの性格の異なる歴史書を使ってこの目的を果たしたのです。
以上。

参考文献
イラストでよくわかる 古事記の本  ミニアル+BLOCKBUSTER 彩図社
早わかり 日本史   河合敦=著    日本実業出版社
日本の歴史  旧石器~平安時代  ポプラ社
よくわかる 読む年表 日本の歴史  渡部昇一  WAC
テーマ別だから理解が深まる 日本史  朝日新聞出版