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【御伽草子】庶民が楽しんだ文化とは?

こんにちは。本宮 貴大です。

今回は「【御伽草子】庶民が楽しんだ文化とは?」というテーマでお伝えしたいと思います。

 今回は、室町時代の文学作品として御伽草子について見ていきますが、それだけではなく、当時の庶民が楽しんだ文化全体についても見ていきたいと思います。

 室町時代とは、政治は乱れていましたが、経済発展は大変著しい時代でした。そんな経済成長を背景に、庶民の中にも娯楽を楽しもうとする気風が生まれました。

 当時の庶民が楽しんだ文化の代表的なものは、歌と踊り、そして祭りでした。特に祭りは、村や町でさかんに行われるようになり、女性は華やかな衣服と、花笠などの飾り物をつけて、笛や太鼓などの拍子に合わせて群れて踊る風流踊りが人気を集めました。

 お盆には、念仏を唱えながら踊る念仏風流も行われ、京都では年中行事のひとつになりました。やがて、念仏抜きの踊りだけとなり、盆踊りが生まれました。

 芸能では、室町3代将軍・足利義満の保護のもとで能が発展しましたが、庶民のあいだでは、手猿楽という素朴でより娯楽性の強いものが演じられ、庶民に喜ばれました。手猿楽は、見るのも演じるのも素人の庶民で、女性が演じる女猿楽も人気を呼びました。

 

 さて、文学についてですが、室町時代には夢溢れる物語(御伽草子)がたくさん生まれました。作者は不明なものが多いですが、そのなかには、『浦島太郎』や『ものくさ太郎』、『一寸法師』などの現在も親しまれている物語もあります。

「御伽」とは、話し相手をつとめるという意味で、「御伽草子」とは「人の退屈を紛らわせるための物語」という意味です。しかし、御伽草子の物語は、当初は語り聞かせるものでした。それが絵巻物に描かれるようになり、やがて読みやすい横長の絵本へとかわっていきました。

 御伽草子というと、子供向けの童話のように考えられがちですが、そうした話ばかりではなく、大人でも十分楽しめる題材のものもたくさんありました。昔話や伝説、歴史的な事件などを題材にしたものが多いですが、全体的には「めでたし、めでたし」のハッピーエンドで結ぶものが多いです。登場人物の心理的描写はあまりなく、味わいや面白みのあるストーリー展開に重点が置かれています。

 それらは、内容や登場人物によって以下の6つに分けられます。以下、それら解説と簡単なあらすじを紹介していきます。

【公家に関する物語】

平安時代以来の貴族を主人公にした物語で、恋愛や、近親相〇、血縁関係のない者へのいじめなどを題材にした物語が多いです。代表作には、『鉢かづき』、『和泉式部』、『小町草子』などがあります。

・『鉢かづき』のあらすじ

河内国に姫君がいました。姫君は信心深い母親が亡くなる直前に、鉢をかぶせられてしまいます。姫君は母の意図がわからず、鉢を外すことも出来ずに苦労を重ねました。やがて姫君が命の危険に晒されたとき、これを助てくれた若君と結ばれました。その後、鉢が割れると、その姫君の姿は絶世の美女でした。こうして母の意図がわかった姫君は、若君と幸せに暮らしたというお話です。

 

武家に関する物語】

武士を主人公とした鬼退治や化け物退治、または武士同士の争いなど武勇を題材にした物語が多いです。代表作には『酒呑童子』、『横笛草紙』があります。

・『酒呑童子』のあらすじ

丹波国大江山酒呑童子という鬼神が住んでいました。酒呑童子平安京に下りてきては、財宝や美女をさらっていく恐ろしい存在でした。ある日、天皇から勅命を受けた源頼光は、坂井公時ら四天王を率いて大江山に向かい、神仏の助けを借りて、酒呑童子を見事に退治したというお話です。

 

【僧侶・仏教に関する物語】

僧侶や寺に仕える少年(稚児)、さらには神仏が人間だったころを主人公に、信仰や出家に関する物語です。代表作には『秋の夜長物語』、『さいき』、『ささやき竹』があります。

・『秋の夜長物語』のあらすじ

比叡山東塔の稚児である桂海は、三井寺の稚児で花園左大臣の娘でもある梅若に恋をしました。やがて梅若も桂海に恋い焦がれ、比叡山に向かう途中、天狗にさらわれ、石牢に閉じ込められてしまう。梅若が行方不明になったことで、大騒ぎとなった三井寺は桂海の仕業だとして、比叡山と対立し、さらには花園左大臣の邸宅も焼き討ちしてしまいました。これに憤った比叡山三井寺を焼き討ちにしました。その後、竜に救出された梅若は、実家も三井寺もなくなっていることに絶望して入水してしまいました。これをはかなんだ桂海は東山雲居寺を建立し、梅若の霊を弔ったというお話です。

 

【庶民に関する物語】

庶民を主人公とした物語で、滑稽な話や、出世や求婚に関する物語などがあります。代表作には『一寸法師』、『ものくさ太郎』、『文正草子』があります。

・『文正草子』のあらすじ

常陸国鹿島神宮の下人である文太は、実直勤勉であったにも関わらず、解雇さえてしまいました。しかし、そんな文太ですから、製塩業を始めると瞬く間に成功し、大富豪となりました。やがて文正と改名し、さらには鹿島明神に祈ると娘2人を授かりました。その娘たちは、やがて貴族の妻となり、文正自身も、貴族の仲間入りを果たすことが出来たというお話です。

【異国を舞台にした物語】

中国やインドなどの外国、さらには竜宮などの想像上の異世界にまつわる物語です。代表作には『浦島太郎』があります。

 

【異類に関する物語】

動植物や道具類を主人公にした物語で、人間と結婚したりするなどの異類婚姻譚も含まれています。その代表的なものには『蛤(はまぐり)の草子』、『猫の草子』などがあります。

・『猫の草子』のあらすじ

京都で猫を綱から放すように、という命令が出ました。猫は喜びましたが、鼠は逃げ隠れるようになりました。ある晩、高僧の夢の中に鼠が現れ、その苦しみを訴えました。そこで、高僧は猫に鼠を殺すことをやめるようにいいました。しかし、猫はそれを受け入れられず、結局、鼠たちは各地へと散っていったというお話です。

 これら御伽草子は、平安時代に創作された物語の系統をしっかりと受け継いでおり、江戸時代になると、浮世草子として庶民に親しまれます。

こうした庶民にもわかりやすい物語が成立したということは、室町時代の文学の大衆化を表していると思います。

つづく。

今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

本宮貴大でした。それでは。