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【どう違う?】19世紀までの戦争と20世紀からの戦争

 こんにちは。本宮貴大です。
 この度は、記事を閲覧して頂き、本当にありがとうございます。
 今回のテーマ「【どう違う?】19世紀までの戦争と20世紀からの戦争」というお話です。

19世紀までの戦争 20世紀からの戦争
短期決戦 長期戦
農繁期が近づくと終戦 国力尽きるまで戦う
国王のために戦う 国民のために戦う
専制国家に有利 民主国家に有利
職業軍人が戦争に行く 国民が戦争に行く
戦略・戦術が勝敗を決める 技術力・経済力が勝敗を決める

 19世紀までの戦争と20世紀からの戦争、その最大の違いは、短期決戦であるか、長期戦>であるかという違いです。


 確かに19世紀には、百年戦争や、三十年戦争といった非常に長い期間戦い続けた戦争もあります。しかし、それらの戦争は、断続的で、戦っては休み、戦っては休みという繰り返しをしているに過ぎません。20世紀からの戦争は本当に長期間、ずっと戦い続けているのです。

19世紀までの戦争は、戦場に駆り出されるのは、王族や貴族出身の職業軍人だけです。他国に宣戦布告するのは国王や王族、貴族達で、戦うのも王族や貴族達です。そして戦争によって勝ち得た利益も、やはり王族達のものです。

 一方、国民(農民)は何をしているのでしょうか。まぁ、畑仕事です。
「おい、聞いたか?おら達の国が戦争をはじめたらしいぞ。」
「え?そうなの?ま~た物騒な世の中になりましたね~。まぁ、勝てばいいですね。」
「好きなだけ戦わせておけばいいのよ。奴ら(王族達)は懲りない連中なんだから。さぁ、仕事に戻りましょう。今日はやることが多いわよ。」
 この通り、大半の国民にとっては戦争など、他人事でしかありません。それもそのはず、彼らはその日その日を生きるだけで精いっぱいなのです。
 一方、20世紀からの戦争は、農民や商人などの国民によって構成された国民軍が戦場にいきます。これに関しては後述します。

 19世紀までの戦争は、王族貴族がそれまで蓄えていた備蓄が尽きれば終戦です。
 また、必要に応じて農民を徴兵しても、戦えるのは農閑期だけです。農業には繁忙期があります。繁忙期が来ればすぐに終戦させないと、王族達は年貢を徴収することができません。このように19世紀までの戦争は終戦の理由はいくらでもありました。

 一方、20世紀からの戦争は、国力が尽きるまで戦争をします。国家総動員なのです。になぜでしょうか。第一次世界大戦も、第二次世界大戦も当事国をよく見ると、イギリス、フランス、ロシア、ドイツ、イタリア、アメリカ、日本などの世界を代表する主要国家同士の戦いで、それらの国々が互いに利権をめぐっての対立が発展したものです。したがって、敗戦すれば、利権獲得に失敗するだけでなく、相手国からの恐ろしい経済制裁がまってます。
 しかも、世界の強大な国々同士の対立なので、仲裁として入れる国がありません。したがって、どちらかが降伏するまで完膚なきまでに戦い続けるのです。被害が拡大するはずです。

 19世紀までの戦争は、国王のための戦争です。総司令官は国王であり、戦いの指揮は国王とその参謀達によって行われます。したがって、戦争の勝敗は、国王の手腕によって左右されます。
 そんな絶対的な権限を持つ国王や君主に対し、軍人は忠誠を誓い、死を覚悟して戦いに臨むのです。まさに「国王のための名誉ある死」です。
 日本でもこうした精神を武士道精神と言ったりします。
 そんな日本でも有能な国王がいましたよね。そうです。16世紀の織田信長です。彼の決断は迅速かつ明確なので、家臣以下兵士達は俊敏に行動出来る。現に信長軍の機動力は他国の軍よりも抜きんでていました。惜しくも自らの家臣による謀反により、横死した信長ですが、日本に「信長王朝」が誕生していたことは間違いないでしょう。
 このように19世紀までの戦争は専制国家ほど有利なのです。

 一方、20世紀からの戦争は、国民のための戦争でした。19世紀までにヨーロッパを中心にナショナリズム国民意識)という思想が誕生したのです。ナショナリズムとは、国民一人一人が国の人民としての自覚を持ち、自国の独立と、発展を目指して国のために尽くす精神のことで、民族主義国家主義とも言われています。
 例えば、日本人ならば、日本の発展のために一生懸命働こうと努力する精神のことです。

 ナショナリズムはなぜ誕生したのでしょうか。
17世紀~18世紀、世界の国々は絶対的な権限を持つ国王が独裁的に政治を行う「絶対王政」が主流でした。やがて、不満を持った民衆が立ちあがります。
「国王や貴族の権力の濫用は目に余るものがある。」
「彼らは贅沢な暮しをしているのに、我々は貧しい生活をしている。」
 絶対王政を倒すべく国民達は立ちあがり、革命を起こしました。
 その代表的な革命は、17世紀のイギリスのピューリタン清教徒)革命や名誉革命、18世紀のアメリカのアメリカ独立戦争、そしてフランスのフランス革命です。これらは王族貴族を倒して土地に縛られた農奴を解放し、市民の政府をつくった市民革命(ブルジョア革命)です。
 1789年、革命の知らせを聞いた当時のフランスの国王ルイ16世は言いました。
「なに!レヴォルト(暴動)が?」
「いえ、陛下、レボリューション(革命)が起きました。」
「なに、所詮は、農業しかやっていない農民軍だ。早急に鎮圧せよ。」
 しかし、結局、フランス革命は成功し、国王ルイ16世は王妃マリー=アント・ワネットとともに処刑されてしまします。
 これらの教訓から新たな支配者階級はあることを学びます。
「国民軍は職業軍人よりもはるかに強い。国民感情とは、執念深く、恐ろしいものだ。これを利用することが出来る。」

 国民軍が職業軍人より強かった例は日本にもあります。明治初頭に起きた西南戦争では、西郷隆盛率いる武士達(職業軍人)が農民や町民で構成された政府軍に敗れました。

 話を戻します。

 こうして革命によって絶対王政が倒され、イギリスやフランスをはじめヨーロッパに民主国家が誕生しました。
 民主主義とは、国民が主体となって政治を行うしくみのことですが、人間が生まれながらに持っている自由や平等などの権利を尊重した政治形態です。これが国民意識ナショナリズム)を芽生えさせ、イギリス人はイギリス国民として、アメリカ人はアメリカ国民として、フランス人はフランス国民として、その誇りやプライドを持つようになったのです。

 さて、19世紀までの戦争は職業軍人が戦場に向かうのに対し、20世紀からの戦争は国民軍が戦場に向かいます。
 当然ですが、戦争を長期間続けていると・・。
「もっと武器を持ってこい」
「もっと弾薬を持ってこい」
「もっと食料を持ってこい」
「もっと兵隊を持ってこい」
 ということになります。
 兵士の数は職業軍人だけでは明らかに足りません。
 国民軍と国民感情の強さを知ったことで、長期戦である20世紀の戦争では、是非とも国民を扇動して国民軍を率いて戦いたいところです。

 国民意識ナショナリズム)が芽生えたことで、国民同士の団結力は高まったものの、それだけでは、国民を徴兵することは出来ません。国民の戦争参加への大義名分を示さなくてはいけないのです。
 19世紀までの職業軍人の場合、「国王の私腹を肥やすため」というもので十分でしたかが、国民軍はそんな正直なものでは動きません。当然ですね。そこで・・・・。
「国民を守るため」
「自分達の領土を守るため」
「正義のため」
「民主主義のため」
という国民意識に則したものを大義として掲げました。
特に強い動機になったのは、「民主主義のため」です。
民主国家であるイギリスやフランスは、専制国家を「悪の帝国」としてまつりあげ、民主国家を共通の敵としました。
第一次世界大戦では、その構図がはっきりとしています。イギリス・フランス・ロシアの連合国軍(民主国家群)と、ドイツ・オーストリアオスマン帝国による同盟国軍(専制国家群)の対立です。
(当時、ロシアは専制国家でしたが、戦争中にロシア革命が起こり、一時的に民主国家になっています。後にソ連という社会主義国家になります。)

さぁ、国民軍を徴兵します。
「まずは、独身者を徴兵する。」
「兵士が足りなくなってきた。妻帯者も徴兵する。」
「また兵士が足りなくなってきた。年齢制限を引き下げる。」
20世紀からの戦争は、国民のための戦争はとして男たちを前線へと駆り出しました。
いや、むしろ「正義のための戦争」、「民主主義のために戦争」となれば、「悪の帝国」である専制国家群を倒すために男たちは喜んで戦争に参加しました。
「民主主義を守るためだもんね。男たちが戦場で戦うなら、私たち女も軍需工場で働くわ。」
こうして20世紀の戦争は全国民を巻き込んだ国家総力戦となったのでした。

先述の通り、20世紀からの戦争は民主国家である方が有利です。それはつまり長期戦には必要不可欠な国民軍が専制国家にはそぐわないシステムだということです。
これが原因で、当時の専制国家は、次々に滅亡していきました。
1917年のロシア革命によるロシア帝国の滅亡
1918年のドイツ革命によるドイツ帝国の滅亡
1918年にオーストリアハンガリーの二重帝国が滅亡
1922年にトルコ革命によってオスマン帝国が滅亡
このように、時代の流れにそぐわない君主国家はどんどん姿を消していきました。

さぁ、表の最後の項目になりますが、19世紀までの戦争は、国王や参謀本部の戦略や戦術が勝敗を決めました。しかし、20世紀からは、技術力や経済力などの国力のある国が勝敗を決めるようになっていきます。
これに関しては、次回以降、第一次世界大戦を事例として上げ、ストーリーを展開しながら詳しく解説していきたいと思います。(以下のリンクからどうぞ。)
motomiyatakahiro.hatenablog.com
motomiyatakahiro.hatenablog.com


最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
本宮貴大でした。それでは。
参考文献
世界史劇場 第一次世界大戦の衝撃       神野正史=著  ベレ出版
学校が教えないほんとうの政治の話       斉藤美奈子=著 ちくまプリマー親書
日本人のための世界史入門           小野谷敦=著  新潮新書